普段の点検や整備の時には、全てではありませんがトルクレンチを使用しています。
トルク不足によるパーツの固定力不足の防止、逆にトルク過多によるパーツの破損を防ぐためです。
なのですが、意外と落とし穴があったりします。
先日LEVEL2でお受けした作業。洗車に加えて各部のグリスアップやトルクチェックを行うメニューです。
まずは持ち込まれた状態の撮影
洗車スタート
ヘッドパーツグリスアップ
ホイールグリスアップ
BB はカートリッジで分解出来ないので、今回はグリスアップはせず、トルクチェックのみの対応。あれこれ作業して、、、
完成。
一通り、滞りなく作業を進めました。ハンドル、サドル、ブレーキ本体等トルクチェックした後、一応試乗して最終確認します。
しかし問題発生。ペダルを強めに踏み込むたびカチッ、カチッという音鳴りが発生。
こうなると、もう一度チェックです。
スプロケットはホイールのオーバーホールを実施しているので、締め込み、油膜切れ等、ここの可能性は低そう。
ヘッドパーツもグリスアップ済みだし、ハンドル周りも規定トルクで締めつけてあるので可能性は低い。
そうなると、クイックレリーズの締め込み、ペダルの締め込みが怪しい。
しかし確認すると、ちゃんと締まっている。でも音鳴りは止まず。
こうなると、感覚的にBB周りから音が出ているようなので、BBの再チェック、ということになります。
ねじ切りのBBは、緩みが出ると音が出ることが多いのですが、ちゃんとそこはチェックしたはずなのに、と思いつつ一度外してみることに。
工具をかけて回すと、左はすんなり外れたのに、右側は最初緩んでからの回転がやけに重い。
ああ、これは、、、と思いました。
画像がちょっと分かりにくいですが、ワイヤーリードの固定ボルト。これが長すぎてBB本体に接触していました。
BB本体を良く見ると、線が入ってます。ボルトが接触したまま締め込まれたせいで、BB本体に線が入ったと推測されます。
ボルトの接触が取り付け時に大きな抵抗となっており、感覚的にはしっかりとトルクがかかっているのに、じつはちゃんと締まり切っていないという状態でした。
カートリッジのBBは胴体が太いものが多く、今回のフレームはBBとフレームの隙間が僅かしかないので、長いボルトを使ってワイヤーリードを固定すると、簡単にBB本体にボルトが達してしまいます。
ボルトを短いものに交換すると、BBはスムースに回って行き、しっかりと固定出来ました。
これで再度試乗チェック。
しかし、まだ僅かに音鳴りが。。。
もう一度ペダルに戻ってのチェック。
う〜む、どうやらシャフトにグリスが塗布されていなかった模様。
そして、クランク側のネジ山の精度があまり良くないようで、外す時にやはり抵抗感が大きい感じでした。
なので、対処します。
ペダルタップでネジを切り直して、シマノ・プレミアムグリスを塗布。
これで試乗チェックすると、、、
見事に音鳴りは解消しました〜!
原因はペダルとBB、という事でした。
どちらも、締め込み不足ではない状態でしたが、実は正しいトルクで締まっていた訳では無く、一方は異物による抵抗、もう一方はネジ山自体の精度による抵抗で、トルク値が正常に近い値になっていて異常なしと判断してしまった為でした。
音鳴りのトラブルシューティングって、なかなか奥が深いです。
色々な原因を予測しながら、一つ一つ原因を潰して行く地味な作業。
BB周りかと思ったらヘッドパーツだったり、単にクイックレリーズ、スルーアクスルがトルク不足だった、なんてケースもよくあります。
タイヤのフラップがめくれていて音を出していた、なんて事もありました。
そして、ペダルについてはグリスの種類によって音鳴りが出る場合もあります。
私の経験上、ペダルの音鳴りに一番効くのはシマノ・プレミアムグリスかな、と思っています。
他のグリスで音鳴りしていたのに、シマノに塗り直したら音が消えた、という事が結構あります。
原因究明作業は、バイクとの戦い。
トルクチェックによる管理は基本ですが、バイクのコンディションは一台一台違うので、100%それで良し、という訳には行かないのです。
なので、日々色々なバイクと接して、色々なトラブルに直面して、それを解決して自分の引き出しを増やして行く事が大事だなと、いつも思います。
技術向上に終わりはありません。
でも解決すると、「俺の勝ちだ」と内心ほくそ笑みますけどね😎
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